届かない手紙(訳) -

幾度となく君に手紙を書こうと思ったが、そのたびに、書くべきことが頭に浮かばなかった。君は僕の言いたいことをほとんど知っているのだから。
とにかく、近頃僕はとても怖い。自分が魔物に喰われてしまうのではないか、狂気に陥ってしまうではないか――一方でほかの人間が僕よりましだとは思えないけれど――と。世界はますます醜く、生きにくい場所となったことは確かだ。人類に希望があるかという問題よりも、人類にとって希望とはなにかという問題は、もう絶望的だ。そういう意味で、僕たちの恐れは、未来世紀の人間が感じるであろう目まいと似ている。もしも、この悪循環から決して脱出できないのであれば、僕たちの意識は――そしてそれが苦しみをもたらすという観点からみて――、・・・・・・やはり罪だ。
そして僕はわからない。まだ楽しみをみて笑っていられる人々を、わざわざ啓蒙する義務がどこにあるのか――答えが美しいものではないのなら、たとえそれが答えであっても、人々自身の足で歩かせるほうがましなのではないか。子どもたちが喜ぶクリスマスの夢を、事実で破壊する理由なんてありはしないじゃないか。君と僕は、人間たちが罠に落ちるのを守ってやる使命なんだと思い込みながら、ほんとうは彼岸へ渡ってしまった孤独を喘いでいるに過ぎないんじゃないだろうか。
もちろん――彼岸には波乱がないから、半分の人間は僕たちの言葉に耳を傾けるにちがいない。しかしそれだってやっぱり病気みたいなもので、治ってしまったら誰だって陰気な病院には留まりたくはないんだ。病院が世界の中心になったとしても、それはどんな理念に人類を導いていくというのか――。
すばらしいのは価値で、すなわち価値はすばらしくて、価値の創造が人間を美しくする。なのに僕たちは、価値の脆弱なことを嘆いて、その変わりやすい態度に敬遠して、身の置き場を知らない流浪者だ。ああ、愚かなままで死ぬのがいちばん正しいとは!これぞ人生が悲惨な証拠だ。
もし知っているなら教えて欲しい、われわれのゴールは何処にあるのか!みなぎる力を、どの方向へ発揚するべきなのか。人間は力を手に入れた。絶大な産業的・物理的な建設力を握っている。そうして選択を迫られている。しかし――真理は、選択を許さない!あらゆる選択は絶滅をもたらす。救世主、偉大なる者は、価値を創造する。君と僕の仕事は、人類に光を見せることだ。
天が君とともにありますように
den 22.06.2005 edit

幾度となく君に手紙を書こうと思ったが、そのたびに、書くべきことが頭に浮かばなかった。君は僕の言いたいことをほとんど知っているのだから。
とにかく、近頃僕はとても怖い。自分が魔物に喰われてしまうのではないか、狂気に陥ってしまうではないか――一方でほかの人間が僕よりましだとは思えないけれど――と。世界はますます醜く、生きにくい場所となったことは確かだ。人類に希望があるかという問題よりも、人類にとって希望とはなにかという問題は、もう絶望的だ。そういう意味で、僕たちの恐れは、未来世紀の人間が感じるであろう目まいと似ている。もしも、この悪循環から決して脱出できないのであれば、僕たちの意識は――そしてそれが苦しみをもたらすという観点からみて――、・・・・・・やはり罪だ。
そして僕はわからない。まだ楽しみをみて笑っていられる人々を、わざわざ啓蒙する義務がどこにあるのか――答えが美しいものではないのなら、たとえそれが答えであっても、人々自身の足で歩かせるほうがましなのではないか。子どもたちが喜ぶクリスマスの夢を、事実で破壊する理由なんてありはしないじゃないか。君と僕は、人間たちが罠に落ちるのを守ってやる使命なんだと思い込みながら、ほんとうは彼岸へ渡ってしまった孤独を喘いでいるに過ぎないんじゃないだろうか。
もちろん――彼岸には波乱がないから、半分の人間は僕たちの言葉に耳を傾けるにちがいない。しかしそれだってやっぱり病気みたいなもので、治ってしまったら誰だって陰気な病院には留まりたくはないんだ。病院が世界の中心になったとしても、それはどんな理念に人類を導いていくというのか――。
すばらしいのは価値で、すなわち価値はすばらしくて、価値の創造が人間を美しくする。なのに僕たちは、価値の脆弱なことを嘆いて、その変わりやすい態度に敬遠して、身の置き場を知らない流浪者だ。ああ、愚かなままで死ぬのがいちばん正しいとは!これぞ人生が悲惨な証拠だ。
もし知っているなら教えて欲しい、われわれのゴールは何処にあるのか!みなぎる力を、どの方向へ発揚するべきなのか。人間は力を手に入れた。絶大な産業的・物理的な建設力を握っている。そうして選択を迫られている。しかし――真理は、選択を許さない!あらゆる選択は絶滅をもたらす。救世主、偉大なる者は、価値を創造する。君と僕の仕事は、人類に光を見せることだ。
天が君とともにありますように
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