オースター・ムラカミ・パスカル -
「僕はそれまで、何ごとも一般化してしまう癖があった。物同士の差異よりも、類似のほうに目が行きがちだった。(略)光の強さや角度によって、物はつねに姿を変える。人が通りかかったり、突然さっと風が吹いたり、ひょんなところで光が反射したり、といった周囲の状況によって、その様相はいくらでも変化しうる。何もかもがつねに流動のただなかにあるのだ。壁を構成する二つの煉瓦は、一見ほぼそっくりに見えるかもしれないが、決してまったく同一と考えてはならない。さらに重要なことに、同じ煉瓦でさえ、決して同じではない。外気にさらされ、寒さや暑さや風雨の影響を受けて、煉瓦は少しずつ崩壊していく。かりに何世紀ものあいだ観察を続けられるなら、いずれそれが消えてなくなるのが見えることだろう。すべての無生物は崩壊しつつあり、すべての生物は死につつある。そう思うと頭がくらくらしてきた。分子たちの激しく狂おしい運動、物質のたえざる爆発、さまざまな衝突、すべての物の表面化で煮えたぎる混沌、そういったものを僕は思い描いた」
「この世界において、退屈でないものには人はすぐに飽きるし、飽きないものはだいたいにおいて退屈なものだ。そういうものなんだ」
"Anyone can spend a life free from boredom by gambling just a little every day. If every morning you give them the money they would otherwise win, on condition that they do not gamble, you make them unhappy."
den 17.11.2005 edit
「僕はそれまで、何ごとも一般化してしまう癖があった。物同士の差異よりも、類似のほうに目が行きがちだった。(略)光の強さや角度によって、物はつねに姿を変える。人が通りかかったり、突然さっと風が吹いたり、ひょんなところで光が反射したり、といった周囲の状況によって、その様相はいくらでも変化しうる。何もかもがつねに流動のただなかにあるのだ。壁を構成する二つの煉瓦は、一見ほぼそっくりに見えるかもしれないが、決してまったく同一と考えてはならない。さらに重要なことに、同じ煉瓦でさえ、決して同じではない。外気にさらされ、寒さや暑さや風雨の影響を受けて、煉瓦は少しずつ崩壊していく。かりに何世紀ものあいだ観察を続けられるなら、いずれそれが消えてなくなるのが見えることだろう。すべての無生物は崩壊しつつあり、すべての生物は死につつある。そう思うと頭がくらくらしてきた。分子たちの激しく狂おしい運動、物質のたえざる爆発、さまざまな衝突、すべての物の表面化で煮えたぎる混沌、そういったものを僕は思い描いた」
「この世界において、退屈でないものには人はすぐに飽きるし、飽きないものはだいたいにおいて退屈なものだ。そういうものなんだ」
"Anyone can spend a life free from boredom by gambling just a little every day. If every morning you give them the money they would otherwise win, on condition that they do not gamble, you make them unhappy."
黒血 -
den 01.11.2005 edit
又有一郡守病,佗以為其人盛怒則差,乃多受其貨而不加治,無何棄去,留書罵之。郡守果大怒,令人追捉殺佗。郡守子知之,屬使勿逐。守瞋恚既甚,吐黒血数升而愈。≪三国志・華佗伝≫
老婆 -
den 01.11.2005 edit
同胞よ、なんじは孤独の中に往かんとするのか?なんじの自我への路を求めんとするのか?されば停まれ。わが言うをきけ。
「求むる者は迷うであろう。孤立してあることは罪過である。」――かく群衆は言う。なんじがこの群集に属すること久しかつた。
この群集の声はいまも尚なんじのうちに響いている。かくて、なんじが 「われはもはやなんじらと等しき良心を持たぬのだ。」と言うとき、それは詠嘆であり、痛楚である。
みよ、なんじのこの痛楚は、かの等しき良心が生んだところのものである。この良心の最後の余燼は、なおなんじの悲哀の上に燃えている。
さあれ、なんじは、この路がなんじの自我への路である故に、あえて悲痛の路を選ばんとする。しからば、なんじの権利を見せてくれ、――なんじの力を示してくれ!
なんじは一つの新らしい力であるか?一つの新らしい権利であるか?最初の運動であるか?みずから輾りいずる車輪であるか?また、なんじは星をも強要して、なんじのめぐりを運行せしむることができるか?
あヽ、高さに対してなんという情欲があることぞ!野心家たちのなんという多くの痙攣があることぞ!なんじがかかる情欲者また野心家ではない、ということを示してくれ!
あヽ、いかに多くの大思想があることぞ!かれらは鞴の作用よりしないのだ。吹き膨らまし、空にする。
なんじは自己を自由だという。だが、われが聴きたいと思つているのは、なんじの支配的な思想なのだ。なんじが軛から脱れた、ということではない。……
同胞よ、なんじはかの『軽蔑』という言葉を知つているか?また、軽蔑する者に対してなんじ自身を公正ならしめんとする、なんじの公正の苦悩をば知つているか?
なんじは多数者を強要して、なんじについて改め学ばしめんとする。之に依つてかれらは、なんじに含むのである。なんじはかれらに近づき、しかも通り過ぎ去つた。之をかれらは宥すことができない。
なんじはかれらを超えた。なんじが登ること高ければ高いほど、嫉妬の眼はなんじを小さく見る。しかして、飛翔しゆく者は最もはなはだしい憎しみを受けねばならぬ。
「いかなれば、なんじらがわれに対して公平でありえようぞ!」――となんじは言わねばならぬ。「われは運命の当然の分前として、なんじらの不公正を選び取るのだ。」
かれらは孤独なる者にむかつて、不公正と汚穢とを投げつける。されど、心せよ、同胞よ、もしなんじが星であろうと願うならば、かれらに対し光り耀くことこの故に薄くあつてはならぬのだ!
さらに、善き者、義しき者を警戒せよ!自己の為に道徳を創りいだす者を、かれらは好んで磔刑にする。――かれらは孤独なる者を憎悪する。
神聖なる単純をも警戒せよ!この女にとつては、単純ならざる一切のものは邪悪である。この女は好んで火を――焚刑の火を弄ぶ。
また、なんじらの愛の発作をも警戒せよ!孤独なる者は、彼に出会する者に、あまりにもはやくその手を差しのべることがある。
大凡の人間には手を差しのぶるな。ただ前足のみを与えよ。しかも、この前足には猛獣の爪を潜めよ。
さあれ、なんじが出会しうる最悪の敵は、ただつねになんじ自身である。洞窟に、森林に、――なんじ自身がなんじを待ち伏せている。……
同胞よ、なんじの愛をもて、またなんじの創造をもて、なんじの孤独の中に行け。時を経て後、公正はようやくなんじを追つて、跛足をひきつつ跟ききたるであろう。
同胞よ、なんじわが涙を得て、なんじの孤独の中に行け。自己を超えて創造せんと欲する者、かくして没落してゆく者――、われはこの人を愛する。
ツァラトストラはかく語つた。
「女について、われにも語れ。」と老婆は言つた。「われはすでに年老いている。やがてふたたび忘れ去るであろうから。」
ここに、われは老婆の請いを容れて、かく語つた。――
女に於て、一切は謎である。しかして、女性に於て、一切は一つの解決を持つ。そは妊娠である。
女性にとつて、男性は一つの手段である。目的はつねに子である。しからば、男性にとつて、女性は何であるか?
真の男性は二つのものを欲望する。――すなわち、危険と遊戯である。この故に、彼はいと危険なる玩具として女性を欲望する。
男性は戦闘のために教育せらるべく、女性は戦士の慰安のために教育せらるべし。他の一切は痴愚にすぎぬ。
あまりにも甘美なる果実――、之は戦士の好むところではない。この故に戦士は女性を好む。もつとも甘美なる女性と雖、なお苦味を帯びているからだ。
女性は男性よりもよく小児を理解する。しかも、男性は女性よりもより以上に小児に似ている。
真の男性のうちには小児が隠れている。しかし、遊戯せんことを願つている。いざ、なんじら女性たちよ、男性のうちの小児を発見せよ!
女性よ、玩具であれ。清純であれ。繊細であれ。いまだなお来らざる世界のあらゆる道徳によつて光被されたる、宝石に似てあれ!
なんじらの愛のうちには、一つの星が輝いてあれ。なんじらの希望は――「われ超人を生まんとねがう。」ということにあれ!
なんじらの愛は勇気を知れ!なんじらに畏怖を吹き入れる男性に、愛をもて立ち向かえよ!
なんじらの愛は名誉を知れ!――女性が名誉を解することは、この事の他にはない。なんじが愛されるよりも、より多く愛せよ。愛に於て第二位に堕つることなかれ、――この事を以てなんじらの名誉たらしめよ!
女性が愛するときには、男性は恐怖せよ。この時には、女性は一切の犠牲を捧げる。しかも、他のすべてにいかなる価値をも見ないからだ。……
男性の幸福は、われ欲す、にある。――女性の幸福は、かれ欲す、にある。
「みよ、いまぞまさに世界は完全である!」――欠くることなき愛により服従するとき、すべての女性はかく考える。
女性は服従せねばならぬ。かくする事によつて、おのれの表面のために、より深き内面を発見せねばならぬ。女性の心情は表面である。浅い水面に張つた荒れ揺らぐ膜である。
之に反して、男性の心情は深い。その水流は地下の洞窟にざわめいている。女性は男性の力を予感はする、しかし、理解はなしえない。――
かく言つた時、老婆はわれに答えた。――「ツァラトストラは多くの至言を吐いた。ことに、なお年若い女のために、至言であつた。
不思議なるかな、ツァラトストラは女性を知ることが尠ない。しかも女性についての彼の判断は正しい!之もまた、女性にあつては不可能事なきによるのであるか?……
なんじは若い。そうして、子を欲し、結婚を欲している。されば、われはなんじに問おう、――なんじはたして己が子を欲望しうる人間であるか?と。
なんじは勝者であるか?自己を克服した者であるか?官能の命令者であるか?また、なんじの有するもろもろの徳性の支配者であるか?――かくわれはなんじに問う。
それとも、なんじの欲望を通じて、獣と必要とが声を挙げているのではないか?あるいは寂寥が?または自己に対する不満が?
われは願う、――なんじの勝利となんじの自由とが、一人の子を渇望していることを。なんじはなんじの勝利と解放とのために、生きた記念碑を築くべきである。
なんじを超えて築くべきである。とはいえ、まずなんじみずからが築かれてあらぬばならぬ。肉体に於て、霊魂に於て、確乎と築かれてあらねばならぬ。……
また、かの男は真理を求めて勇士のごとく征つた。――ついに、かれは一つの化粧せる小虚偽を連れ帰った。之ぞ彼の結婚である。
また、かの男は交友において易く容さず、選りに選つた。しかるに、彼はその交友を一挙にして破壊した。すなわち彼は結婚したのである。
また、ある者は天使の徳を具えた婢を求めた。しかるに、彼はたちまち女の僕となり果てた。すなわち、彼は天使にすら化せざるをえなかつた。……
女性に対するなんじらの愛と、なんじらに対する女性の愛と。――ああ、之が、なお未知にして苦悩しつつある神々への同情であらんことを!しかるに、大凡は、二匹の獣が互いに揣摩するに過ぎぬ。
なんじらの至上の愛と雖、ただ狂喜せる比喩であり、苦痛に充ちた灼熱である。そは、なんじらをより高き路へと照らしてゆくべき、一つの炬火である。
いつか、なんじらは自らを超えて愛すべきだ!されば、まず愛することを学べ!この故に、なんじらは、なんじらの愛の苦き杯を干さねばならぬ。
至上の愛の杯といえでも苦い。かくてこそ、この愛はなんじらに超人への憧憬、創造者への渇望を与える!
創造者への渇望、超人への箭と憧憬。――語れ、同胞よ、はたして之がなんじの結婚への意志であるか?
「求むる者は迷うであろう。孤立してあることは罪過である。」――かく群衆は言う。なんじがこの群集に属すること久しかつた。
この群集の声はいまも尚なんじのうちに響いている。かくて、なんじが 「われはもはやなんじらと等しき良心を持たぬのだ。」と言うとき、それは詠嘆であり、痛楚である。
みよ、なんじのこの痛楚は、かの等しき良心が生んだところのものである。この良心の最後の余燼は、なおなんじの悲哀の上に燃えている。
さあれ、なんじは、この路がなんじの自我への路である故に、あえて悲痛の路を選ばんとする。しからば、なんじの権利を見せてくれ、――なんじの力を示してくれ!
なんじは一つの新らしい力であるか?一つの新らしい権利であるか?最初の運動であるか?みずから輾りいずる車輪であるか?また、なんじは星をも強要して、なんじのめぐりを運行せしむることができるか?
あヽ、高さに対してなんという情欲があることぞ!野心家たちのなんという多くの痙攣があることぞ!なんじがかかる情欲者また野心家ではない、ということを示してくれ!
あヽ、いかに多くの大思想があることぞ!かれらは鞴の作用よりしないのだ。吹き膨らまし、空にする。
なんじは自己を自由だという。だが、われが聴きたいと思つているのは、なんじの支配的な思想なのだ。なんじが軛から脱れた、ということではない。……
同胞よ、なんじはかの『軽蔑』という言葉を知つているか?また、軽蔑する者に対してなんじ自身を公正ならしめんとする、なんじの公正の苦悩をば知つているか?
なんじは多数者を強要して、なんじについて改め学ばしめんとする。之に依つてかれらは、なんじに含むのである。なんじはかれらに近づき、しかも通り過ぎ去つた。之をかれらは宥すことができない。
なんじはかれらを超えた。なんじが登ること高ければ高いほど、嫉妬の眼はなんじを小さく見る。しかして、飛翔しゆく者は最もはなはだしい憎しみを受けねばならぬ。
「いかなれば、なんじらがわれに対して公平でありえようぞ!」――となんじは言わねばならぬ。「われは運命の当然の分前として、なんじらの不公正を選び取るのだ。」
かれらは孤独なる者にむかつて、不公正と汚穢とを投げつける。されど、心せよ、同胞よ、もしなんじが星であろうと願うならば、かれらに対し光り耀くことこの故に薄くあつてはならぬのだ!
さらに、善き者、義しき者を警戒せよ!自己の為に道徳を創りいだす者を、かれらは好んで磔刑にする。――かれらは孤独なる者を憎悪する。
神聖なる単純をも警戒せよ!この女にとつては、単純ならざる一切のものは邪悪である。この女は好んで火を――焚刑の火を弄ぶ。
また、なんじらの愛の発作をも警戒せよ!孤独なる者は、彼に出会する者に、あまりにもはやくその手を差しのべることがある。
大凡の人間には手を差しのぶるな。ただ前足のみを与えよ。しかも、この前足には猛獣の爪を潜めよ。
さあれ、なんじが出会しうる最悪の敵は、ただつねになんじ自身である。洞窟に、森林に、――なんじ自身がなんじを待ち伏せている。……
同胞よ、なんじの愛をもて、またなんじの創造をもて、なんじの孤独の中に行け。時を経て後、公正はようやくなんじを追つて、跛足をひきつつ跟ききたるであろう。
同胞よ、なんじわが涙を得て、なんじの孤独の中に行け。自己を超えて創造せんと欲する者、かくして没落してゆく者――、われはこの人を愛する。
ツァラトストラはかく語つた。
「女について、われにも語れ。」と老婆は言つた。「われはすでに年老いている。やがてふたたび忘れ去るであろうから。」
ここに、われは老婆の請いを容れて、かく語つた。――
女に於て、一切は謎である。しかして、女性に於て、一切は一つの解決を持つ。そは妊娠である。
女性にとつて、男性は一つの手段である。目的はつねに子である。しからば、男性にとつて、女性は何であるか?
真の男性は二つのものを欲望する。――すなわち、危険と遊戯である。この故に、彼はいと危険なる玩具として女性を欲望する。
男性は戦闘のために教育せらるべく、女性は戦士の慰安のために教育せらるべし。他の一切は痴愚にすぎぬ。
あまりにも甘美なる果実――、之は戦士の好むところではない。この故に戦士は女性を好む。もつとも甘美なる女性と雖、なお苦味を帯びているからだ。
女性は男性よりもよく小児を理解する。しかも、男性は女性よりもより以上に小児に似ている。
真の男性のうちには小児が隠れている。しかし、遊戯せんことを願つている。いざ、なんじら女性たちよ、男性のうちの小児を発見せよ!
女性よ、玩具であれ。清純であれ。繊細であれ。いまだなお来らざる世界のあらゆる道徳によつて光被されたる、宝石に似てあれ!
なんじらの愛のうちには、一つの星が輝いてあれ。なんじらの希望は――「われ超人を生まんとねがう。」ということにあれ!
なんじらの愛は勇気を知れ!なんじらに畏怖を吹き入れる男性に、愛をもて立ち向かえよ!
なんじらの愛は名誉を知れ!――女性が名誉を解することは、この事の他にはない。なんじが愛されるよりも、より多く愛せよ。愛に於て第二位に堕つることなかれ、――この事を以てなんじらの名誉たらしめよ!
女性が愛するときには、男性は恐怖せよ。この時には、女性は一切の犠牲を捧げる。しかも、他のすべてにいかなる価値をも見ないからだ。……
男性の幸福は、われ欲す、にある。――女性の幸福は、かれ欲す、にある。
「みよ、いまぞまさに世界は完全である!」――欠くることなき愛により服従するとき、すべての女性はかく考える。
女性は服従せねばならぬ。かくする事によつて、おのれの表面のために、より深き内面を発見せねばならぬ。女性の心情は表面である。浅い水面に張つた荒れ揺らぐ膜である。
之に反して、男性の心情は深い。その水流は地下の洞窟にざわめいている。女性は男性の力を予感はする、しかし、理解はなしえない。――
かく言つた時、老婆はわれに答えた。――「ツァラトストラは多くの至言を吐いた。ことに、なお年若い女のために、至言であつた。
不思議なるかな、ツァラトストラは女性を知ることが尠ない。しかも女性についての彼の判断は正しい!之もまた、女性にあつては不可能事なきによるのであるか?……
なんじは若い。そうして、子を欲し、結婚を欲している。されば、われはなんじに問おう、――なんじはたして己が子を欲望しうる人間であるか?と。
なんじは勝者であるか?自己を克服した者であるか?官能の命令者であるか?また、なんじの有するもろもろの徳性の支配者であるか?――かくわれはなんじに問う。
それとも、なんじの欲望を通じて、獣と必要とが声を挙げているのではないか?あるいは寂寥が?または自己に対する不満が?
われは願う、――なんじの勝利となんじの自由とが、一人の子を渇望していることを。なんじはなんじの勝利と解放とのために、生きた記念碑を築くべきである。
なんじを超えて築くべきである。とはいえ、まずなんじみずからが築かれてあらぬばならぬ。肉体に於て、霊魂に於て、確乎と築かれてあらねばならぬ。……
また、かの男は真理を求めて勇士のごとく征つた。――ついに、かれは一つの化粧せる小虚偽を連れ帰った。之ぞ彼の結婚である。
また、かの男は交友において易く容さず、選りに選つた。しかるに、彼はその交友を一挙にして破壊した。すなわち彼は結婚したのである。
また、ある者は天使の徳を具えた婢を求めた。しかるに、彼はたちまち女の僕となり果てた。すなわち、彼は天使にすら化せざるをえなかつた。……
女性に対するなんじらの愛と、なんじらに対する女性の愛と。――ああ、之が、なお未知にして苦悩しつつある神々への同情であらんことを!しかるに、大凡は、二匹の獣が互いに揣摩するに過ぎぬ。
なんじらの至上の愛と雖、ただ狂喜せる比喩であり、苦痛に充ちた灼熱である。そは、なんじらをより高き路へと照らしてゆくべき、一つの炬火である。
いつか、なんじらは自らを超えて愛すべきだ!されば、まず愛することを学べ!この故に、なんじらは、なんじらの愛の苦き杯を干さねばならぬ。
至上の愛の杯といえでも苦い。かくてこそ、この愛はなんじらに超人への憧憬、創造者への渇望を与える!
創造者への渇望、超人への箭と憧憬。――語れ、同胞よ、はたして之がなんじの結婚への意志であるか?















