悲しき欺瞞 -
「私は限られた時代と空間を超越することを訴え、普遍的なものへ到達に躍起になったが、それは結局現実においては自分が不利であることを誤摩化すための言い訳に他ならなかった。そもそも人間が何か思い込みをするときは決まってそこに個人的な欠陥が潜んでいるものである。自分の最も活躍し、認められやすい場を成り立たせるために、真剣にその世界観を信じ込むことが、実は苦痛から逃れる合理的な防御術なのである。しかもある程度の精神の持ち主ならばそうした能力は本能的に備えているし、或は逆に、欠陥の度合いに応じて人間は精神を複雑にする傾向があるから、図らずとも我々の世界認識にそうした問題があるはまず間違いのない事実だと考えてよい。すなわち、あらゆる人間の自己欠陥が逆さまに暴露されたものが、いわゆる「主張」というものなのである。ここまで考えると、私の言葉を発する意欲はいっきに萎えた。かくして私は沈黙し、十三年間、一切の発言を控えるに至ったのである」
den 15.08.2006 edit
「私は限られた時代と空間を超越することを訴え、普遍的なものへ到達に躍起になったが、それは結局現実においては自分が不利であることを誤摩化すための言い訳に他ならなかった。そもそも人間が何か思い込みをするときは決まってそこに個人的な欠陥が潜んでいるものである。自分の最も活躍し、認められやすい場を成り立たせるために、真剣にその世界観を信じ込むことが、実は苦痛から逃れる合理的な防御術なのである。しかもある程度の精神の持ち主ならばそうした能力は本能的に備えているし、或は逆に、欠陥の度合いに応じて人間は精神を複雑にする傾向があるから、図らずとも我々の世界認識にそうした問題があるはまず間違いのない事実だと考えてよい。すなわち、あらゆる人間の自己欠陥が逆さまに暴露されたものが、いわゆる「主張」というものなのである。ここまで考えると、私の言葉を発する意欲はいっきに萎えた。かくして私は沈黙し、十三年間、一切の発言を控えるに至ったのである」